校内研修(平成16年度)

 テーマ 「ふるさと田野に学び、たくましく生きる力をもつ児童の育成」
       〜へき地・小規模校・複式学級を生かした学習指導の充実をめざして〜
 
1 主題設定の理由
○子どもたちが社会の中で変化に対応し、いろいろな困難に立ち向かっていくためには、たくましく生きていくことができる資質や能力を身につける必要があると考えた。
○子ども一人一人の理解度や定着度を大切にした指導について研究し、基礎的・基本的事項の確実な定着を図る必要があると考えた。
○子どもたちが、これから社会の中で、様々な状況に対応したり、耐えたりすることができるように、たくましく生きる力を育んでいくことが必要であると考えた。
 
2 研究主題について
○ 「ふるさと田野に学び」について
  「ふるさと田野に学び」とは、自分たちの住んでいる田野町のこと(人・自然・文化など)を知ることを通して、地域の方々や家族の思いや願いを受け止め、生き方やその姿に学んでいくことだと考える。また、地域の方々や家族の思いや願いを知ることで、これまでの自分の姿をふりかえり、よりよく生きていこうとする意欲をもたせることである。
○ 「たくましく生きる」について
  「たくましく生きる」とは、心身ともに健全でたくましい人間をめざし、思考力・判断力・表現力等、社会の変化に対応する能力を身につけ、自らの力で積極的に行動できる状態であると考える。特に、子どもの実態を確実に把握し、一人一人に合った取組を進めていくことにより、たくましく生きる力を育むことができると考える。また、地域や家族から大切にされていることが実感できる取組を通して、自分を支えてくれる人たちの存在を知り、心のたくましさも増すと考える。
○サブテーマ「へき地・小規模校・複式学級を生かした」について、次のように考えた。
 「へき地」を生かす
  ・地域とのつながりが密接であり、地域とのつながりを生かした取り組みを積極的に行うことができる。
 「小規模校」を生かす
 ・子ども一人一人に行き届いた学習指導ができ、全児童に活躍の場を保障することができる。
  ・上級生のよい姿を手本にし、教え合い、学び合いができる。
  ・学年や学級、学校をこえての取り組みを積極的に行うことができる。
 「複式学級」を生かす
  ・一人学びの時間が必ずあり、能動型学習と徹底指導の時間が明確である。
  ・下級生は、上級生の姿を見ながら見通しをもって学習に取り組むことができる。
  ・上級生は、下級生の手本としての意識が高まり、自覚をもって行動することができる。
 
3 研究の仮説
  学校における教育活動全体において、次のような視点を設定し、学習指導を工夫・改善していけば、基礎的・基本的事項(確実な学力)を定着させることができるであろう。
@ 子ども一人一人の理解度や定着度を大切にした指導の工夫
A 自分の成長を実感させる評価の工夫
B 日常指導の工夫と環境の整備
 
4 研究の視点
視点@ 子ども一人一人の理解度や定着度を大切にした指導の工夫
  ・個人カードの作成と活用(総合的な分析と対策)
  ・一人一人を大切にした学習指導案の作成(単元レベルでの分析と対策)
  ・一人一人を大切にした授業への取り組み(授業レベルでの分析と対策)
視点A 自分の成長を実感させる評価の工夫
  ・ふりかえりの時間の確保
  ・交流(異学年や本校職員・学校間など)による評価活動
  ・視聴覚機器を活用した評価
視点B 日常指導の工夫と環境の整備
  ・一人学びを保障する授業づくり(授業のパターン化など)
  ・継続的な取り組みの充実(ぐんぐんプリント、田野タイム、読書運動など)
  ・一人一人のがんばりを支える掲示
 
5 研究の実際
 (1) 視点@ 子ども一人一人の理解度や定着度を大切にした指導の工夫
  ○個人カードの作成と活用(総合的な分析・対策)
  標準学力検査やゆうチャレンジなどの結果をもとにして、領域別や小問題ごとに子ども一人ひとりの苦手なところをピックアップした。「なぜできていないのか。」を教師による観察やふりかえりテストなどで分析し、個人カードを作成した。
  個人カードの分析から見えてきた、学校全体としての課題は、次の通りである。
  ・全体的に読解力が低く、知悉語彙量も少ない。
  ・計算速度が遅く、確実ではない。
  ・全体的に数量の感覚を鍛える必要がある。
<対策>
・授業の中で、指導を要する事項を補充できるように、児童の実態に合った指導計画を立て、徹底指導の時間を大切にした取り組みを行い、基礎的・基本的事項の確実な定着を図った。
・田野タイム(朝自習時間)や授業中に、ぐんぐんプリントに取り組み、補充指導を行った。
・確実に定着させなければならないことは、全職員が協力し、マンツーマンで細かいチェックができるようにした。
  ○一人一人を大切にした学習指導案の作成(単元レベルでの分析・対策)
・学習指導案での児童の実態の分析と対策
  ○一人一人を大切にした授業への取り組み(授業レベルでの分析・対策)
・子どもの意欲を高めるためには、評価する時と場を逸しないことが大切だと考える。児童が、よく考え自分なりの意見をもつことが出来た時は、小さなつぶやきであれ聞き漏らさずその場でほめた。問題に意欲的に取り組んでいる時も認め、励ましの声をかけることで自信をもたせ、さらに意欲を高めるようにした。また、本時のふりかえりの問題や単元の評価テストをしたときは間を開けず、すぐに採点をして返すようにしてきた。児童は、間違ったところにその場で気づき、修正することができた。
 (2) 視点A 自分の成長を実感させる評価の工夫
  ○ふりかえりの時間の確保
   「その時間に何を学習したのか」という確認は、基礎的・基本的事項の確実な定着につながるだけでなく、その時間での自分の成長を実感させ、学ぶ意欲を高めていくことができると考えた。
  本時のめあてや課題を明確に捉えさせ、自分なりの考えを表現したりする力を高めることができるように、ノート指導にも力を入れた。ノートには自分の学びの跡が残り、「その時間に何を学習したのか」、「自分がどのように考えたのか」を一目でふりかえることができた。
  ○交流(異学年や本校職員・学校間など)による評価活動
  田野小学校の子どもたちは人と関わる機会が少なく、相手意識を高める活動があまりできていない。そこで、小規模校・複式学級のよさである「異学年交流」を行ったり、比較的時間の融通が利くので学校間の交流を行ったりして、相手意識の向上を図り、担任や学級の友だち以外の人から評価されることで自信をもたせたいと考えた。
<本校職員との交流>
  子どもたちのコミュニケーション能力の向上及び生徒指導面からの心のケアを図るという意図で始まった。今では、確実に定着させなければならないことをマンツーマンで指導できるようにするためのサポート体制の一つとしても活用している。 
<中原小学校5年生・槻木小学校6年生との国語科での交流>
  相手意識を明確にした学習活動を行う中で、自分たちでは気づかなかった課題設定の方法を学んだり、相互評価の力を高めたりすることができた。この中で、「相互評価はお互いを高め合うためのもの」であることを徹底指導した。
   ○視聴覚機器を活用した評価
  形として残らないので、客観的な自己評価ができないものがある。例えば、国語科でのスピーチや発表などの「音声言語」や体育科などでの「動作」などがあげられる。そこで、録音・録画などをし、形として残すことで、自分の成長を実感することができると考えた。
<学級討論会をしよう(6年生・国語科)>
  授業では、自分の話している内容を何度もビデオでチェックすることで課題をつかんで練習し、全5回の討論会に取り組んだ。担任は押さえるべき事項のアドバイスを行い、主体的な学びを引き出す声かけを行うように努めた。映像データは、ポートフォリオ形式でためていき、子どもたち一人一人が自分の成長を実感できるように工夫した。 
<水泳(水遊び)(全学年・体育科)>
  授業では、自分の泳ぎを動画でチェックすることで課題をつかませ、練習に取り組ませた。画像データは、デジタル・ポートフォリオとして 利用し、子どもたち一人一人が自分の成長を実感できるように工夫した。そして、子どもたちのめあてに応じた静止画像を掲示し、いつでも自分の泳ぎをふりかえったり、成長を感じたりできるようにした。
 (3) 視点B 日常指導の工夫と環境の整備
  ○一人学びを保障する授業づくり(授業のパターン化)
  複式学級においては、教師が二つの学年を行き来するため、児童が一人で学習を進めていくことができるような授業のパターン化が必要であると考えた。
  算数の時間を「チャレンジ算数タイム」とし、授業の流れを掲示した。次は何をすればよいかがわかり、学び方が身についてきた。
  ○継続的な取り組みの充実(ぐんぐんプリント、田野タイム、読書運動など)
  自ら学ぶ姿勢の育成と学力定着のための補充指導が行えるように、朝自習時間や一人学びの時間などを活用することにした。
<ぐんぐんプリントコーナーの活用>
  これまでのプリントコーナーの規模を拡大し、一人ひとりに応じた多くのプリントに自由に取り組めるようにした。田野タイム(朝自習)や授業中に活用し、やり終えたプリントは一人ずつファイルにとじ、がんばった跡を見ることができるようにしている。 
<100マス計算への取組>
  計算力の向上を目指し、100マス計算にも取り組ませている。はじめは5分の制限時間内に終わらないこともあったが、毎日続けることで計算のスピードも上がり、児童の自信につながっている。 
<名文暗唱への取組>
  人前ではっきりと話すことが苦手な児童が多いため、月に1〜2編の名文の暗唱に取り組むことにした。廊下に掲示し、朝、教室に入る前に大きな声で読ませる。同じ文を印刷し児童に配布して家庭学習でも取り組ませた。田野小文化祭でも一人ずつ発表したところ保護者や地域の方々から褒めてもらい、ますます意欲的に取り組んでいる。 
<新出漢字の習得を図るための工夫> 
  名文の掲示の隣には各学年の新出漢字コーナーがあり、一日一回読んで教室に入るようにしている。漢字の練習は毎日家庭でもさせるようにし、練習してきた漢字の中から毎回国語の時間に5問テストを実施している。
 <読書100冊運動の推進>
  本に親しむと同時に、読む力をつけるために朝の読書を続けている。また、図書委員会と協力して読書100冊運動に取り組んだ。全児童が本バッグを用意し、空いた時間に読書をする習慣がついてきた。
  ○一人一人のがんばりを支える掲示
  子どもたちにつけたい力を明確にした掲示物を整備することで、授業時間以外にも単元の復習やドリル学習などに意欲的に取り組むことができるようになると考えた。また、学習の跡を掲示物として残すことで、自分のがんばりを実感したり、友達のがんばりを認め合うことにつながると考えた。
  廊下掲示板や教室に算数や社会などの掲示をするコーナーを設けた。現在かけ算を学習中の2年生が九九を唱えるのを上学年児童が聞いてあげたり、いっしょに唱えたりする場面が見られた。
 
6 研究の成果と課題
 (1) 研究の成果
  @子ども一人一人の理解度や定着度を大切にした指導の工夫
○教師自身が、授業の中で「評価と指導の一体化」を強く意識するようになり、子どもたちの姿を見つめた指導方法や指導形態、教材・教具などの工夫を行うようになった。そのため、子どもたちの学力も向上している。
  A自分の成長を実感させる評価の工夫
○様々な評価活動に取り組んだことで、多くの視点で自分のことをふりかえることができるようになり、自分で課題に気づいて取り組む喜びを知った子どももいた。
○子どもたちができるようになるためには、教師の指導が大きく関わっているので、教師自身の指導力の評価にもつながった。
B 日常指導の工夫と環境の整備
○計算力が向上している。計算のスピードが上がるのに比例し、正確さも高まった。また、どんどん計算のスピードが上がっていくので、子どもたちの自信につながっている。      
○異学年のがんばりに触発され、九九ドリルや名文暗唱など日常的な活動もがんばろうとする意欲につながっていった。
  (2) 今後の課題
   @子ども一人一人の理解度と定着度を大切にした指導の工夫
▼子どもたち一人一人の実態を授業に反映していこうとしすぎて、その教科のねらいがぼやけてしまうことがあった。まず、その時間に身につけなければならない力を明確にして取り組んでいきたい。
   A自分の成長を実感させる評価の工夫
▼交流による評価活動では、つけたい力を見据えた視点での評価をしてもらうために、事前の打ち合わせを綿密に行っておく必要がある。
   B日常指導の工夫と環境の整備
▼ぐんぐんプリントでは、自分の苦手なものや面倒なものには取り組もうとしない児童がいた。もっと「自分のためになる」という意識を高めていく取り組みと、楽しんで自ら取り組めるようなプリントづくりなどの工夫をしていきたい。

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